アセスメントに求めるもの(その2)

ここでいうアセスメントは、プロセスアセスメントです。プロセスアセスメントは、一般的にCMMIやAutomotive SPICEなどのベストプラクティスモデルを用いて行います。プロセスアセスメントは、組織のプロセス上の強み、弱み、リスク、改善の機会を明らかにすることを目的としていますが、いつの頃からか、何故か組織の成熟度やプロセス能力レベルを評価する(あるいは判定する)のがアセスメントという捉え方が定着してしまっているように思います。CMMIやAutomotive SPICEが、成熟度や能力レベルを定義しているので、ある意味うなづける部分もあるのですが、内容が伴わずレベルという言葉が独り歩きしてしまっているようです。
そして、「どうすればレベルを取得できるのか」、とか、「モデルに従って忠実に実施すればよい」といった考え方になり、挙句に、労多くして益少なしといった結果に終わってしまうということが多いのではないでしょうか。発注で求められるから仕方なく取り組むといった場合、いやでもこれを維持するとすれば、供給者サイドはもとより、発注者も浮かばれません。

SECの議論で、「問題(課題)ベースの改善」と「モデルベースの改善」を対比した議論がありましたが、このような対比をしなければならないくらい、現状の取り組みが歪んでいることを窺わせます。 問題や課題への対策を抜きにした改善など有り得ないと思いませんか?  問題や課題を浮き彫りにし、それを解決するための糸口を見つけたり、対策を優先順位付けする手段として、モデルやアセスメントはあるはずです。レベルに拘泥するあまり、本来の目的を見失ってはいないでしょうか。

堀田 勝美 について

ほった かつみ
㈱コンピータジャパン チーフ・コンサルタント
CMMI®/ISO15504/33k・Automotive SPICE® リードアセッサ、トレーナー
(PPA Reg No.0008, intacs Principal JP21-1900-20157-13)
■NTTにて交換機ソフトウェア、ビジネスアプリケーションの開発、支援環境構築、標準化、品質管理等に長年従事。特に後半の多くは標準化の一環として、CMM、ISO 9001、ISO/IEC 15504などのモデルを参考にしたアセスメント、プロセス改善活動の導入に精力を注いだ。また、業務の一部として、ISO9001ソフトウェア分野の認定審査業務に従事した。 2003年よりコンピータジャパンに勤務、2004年~2007年 工学院大学CPDセンター客員教授を兼務、2001年度 情報サービス産業協会 協会表彰受賞(SPI)。 ISO/IEC 33k ソフトウェアプロセスアセスメント 国際標準化委員会 委員。
■主な論文/書籍:
-「ソフトウェアプロセスアセスメント手法の評価」、堀田勝美他、情処研報、Vol.92 No.88-4, 1992
-「分散ソフトウェア開発」(共著、共立出版、1996)、
-「ソフトウェアISO9000」(共著、日科技連出版、1996)、
-「ソフトウェア 品質システム要求事項の解説」(共著、日科技連出版、1998)、
-「共通フレーム98 SLCP-JCF98」(共著、通産資料調査会、1998)、
-「チームソフトウェア開発ガイド~Team Software Processによる開発のすべて~」(監訳、コンピュータ・エージ社、2002)、
-「ソフトウェアプロセス改善と組織学習」(大場 充、堀田 勝美、松瀬 健司著、ソフトウェアリサーチセンタ、2003)、
-「人間重視の品質マネージメント ソフトウェア品質保証システムの構築と実践」(堀田 勝美、関 弘充、宮崎 幸生著、ソフトウェアリサーチセンタ、2008)
カテゴリー: アセスメントモデル/手法, 未分類 タグ: , , , パーマリンク

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