アセスメントとは

プロセスアセスメントとは

CMMIやISO/IEC 15504 SPICEなどのベストプラクティスモデルをベースにした プロセスアセスメントはどのように行われるのでしょう。 ここでは、アセスメントの種類、流れ、主要な役割、プロセス改善との関係などを、 SEIのCMMIアプレイザル要件(ARC)ならびにISO/IEC 15504/33000シリーズの要件に準拠した PPA手法に沿って説明します。


1. アセスメントの種類

アセスメントには、次の3つの種類があります。

  1. クラスA(公式アセスメント):改善活動の達成を評価するとともに、さらなる改善の機会を特定するために行います。
  2. クラスB(ギャップアセスメント):改善活動を具体的に始める前に、プロセスの強み、弱みを調査分析し、改善点を洗い出すために行います。
  3. クラスC(ヘルスチェック、簡易アセスメント):日常のプロセスの状況や改善途上の状況を確認したりする時に用いられます。

クラスA、B、Cは厳格さの程度を表し、クラスAが最も厳格なアセスメントになります。 この区分は、CMMIのアプレイザル要件(ARC)によるものですが、ISO15504では、第7部(テクニカルレポート)にクラス1、クラス2、クラス3として規定されています。

公式アセスメントでは、信頼性、正確性の観点から通常2名以上のアセスメントチームで(ARC準拠の場合は少なくとも4名のチームで)実施することが推奨されています(ISO/IEC 15504-3 5.4)。


2. アセスメントの流れ

アセスメントは次の5つのステップからなります。これは、ISO15504の第2部の要件に沿っています。 ISO15504では、そこで規定された要件を満たす、文書化されたアセスメント手法に従うことが求められています。

アセスメントの流れ

  1. 開始:依頼者はリードアセッサを選定し、アセスメントの目的、目標、使用するモデル、アセスメントに対する要求条件、予算などを相談しながら決定します。
  2. 準備:リードアセッサは、アセスメントの範囲を依頼者と相談して決定し、アセスメントチームメンバの選定、日程を含むアセスメント計画を作成します。またアセスメントチームの立ち上げを行います。
  3. データ収集:アセスメントチームは、アセスメント計画に従って、質問票、インタビュー、文書レビューなどを通じてデータを収集します。また、収集したデータに基づいて、モデルのプラクティスの評定を行います。
  4. 分析と報告:アセスメントチームは、収集した情報を分析して強み、弱み、改善の機会などを特定して報告します。 また、クラスA(公式アセスメント)ではモデルのゴールやプロセス属性の評定、成熟度レベル、能力レベルなどを導出します。
  5. 完了:アセスメントの目的、目標、要求条件を満たしたかなどをレビューしてアセスメントを完了します。

3. キー・プレイヤー

  1. 依頼者:アセスメントの目的、目標、アセスメントに対する要求条件などを定め、資源を提供する。
  2. 参加者:インタビューに参加し、アセスメントチームに情報を提供する。
  3. リードアセッサ:アセスメントを計画、管理し、アセスメントの品質を保証する。
  4. アセッサ:チームとしてインタビュー、文書レビュー等を行い、所見やエビデンスを記録するとともに評定を行う。
  5. コーディネータ:アセスメントチーム、参加者間の連絡や調整、必要なサポートを提供する。

アセスメントは、原則的に、リードアセッサ、アセッサからなるチームを構成して行うことが求められています (クラスA(またはクラス1)、クラスB(またはクラス2)では、必須)。 資格制度は、使用するアセスメント手法と密接に関係しますが、PPA手法の場合、アセスメントをできるだけ客観的に行うために、リードアセッサはもとより、アセッサの資格を制度化している点も特長の一つです。 所見ならびに評定を行うのはアセッサの役割であり、責任です。 リードアセッサが最終的に評定するのではなく、アセッサによる合意が最終的な評定になります。 リードアセッサは、アセッサの合意を導くことに責任があります。 そのために、アセッサは、アセッサコースを受講することが必須となりますが、1回受講して試験に合格すればよく、リードアプレイザによるチームメンバトレーニングをアセスメントの都度毎回受けることは必要ありません。

改善を目的とした日常のアセスメントでは、組織の要員がリードアセッサやアセッサとなって実施することが一般的に行われています。 クラスA(またはクラス1)やクラスB(またはクラス2)のアセスメントでは、リードアセッサやアセッサは有資格者またはプロビジョナルであることが必要で、プロビジョナルは、有資格リードアセッサによるスーパバイズ(監督、指導)が必要です。 クラスC(またはクラス3)アセスメントは、有資格アセッサ/プロビジョナルリードアセッサであれば一人でも実施することができます。 アセスメントにおいて、客観性が求められる場合は、外部のメンバをチームに加えることを考慮するのがよいでしょう。 ISO15504 第7部では、クラス1のアセスメントについて、リードアセッサは、アセスメント対象の組織ユニットから独立していることが求められています。



アセスメント

4. プロセス改善のステージとアセスメントの利用

プロセス改善は、典型的に以下のステージに沿って進められます。 改善の各ステージにあわせて、そのステージに適したクラスのアセスメントが使われます。 一つのサイクルを成熟度レベルの各段階に合わせて回すこともありますが、いくつかのプロセス領域に絞りつつインクリメンタルに実施する方法もあります。


プロセス改善のステップ